テント泊初心者でも静かな山を楽しめる一の森テント場
【登った時期】2023年05月下旬
【同行者】なし
一の森山頂から絶景を楽しみ、くるりとほんの一回りしてテント場に帰ってきた。
剣山頂上からゆっくり歩いて1時間ほど。
笹原に囲まれた一の森テント場は、詰め込んで5張り張れるかな~くらいの小さなテント場だ。
▼笹原の中にすっぽり。
美馬市営一の森ヒュッテ
美馬市のWebサイトによると、1937年(昭和12年)頂上付近の樹木で丸太小屋を建てたことに始まる、西日本でもっとも古く歴史あるヒュッテとのこと。
予約は必須で電話のみ。
買い出し等で留守だったり、予約がないときは閉まっていることもあるそうだ。
テント場使用も予約必要。
本当に本当に小さいテント場なので必ず予約を。
ヒュッテの直通電話に繋がらないときは、美馬市観光交流課で予約を受け付けてくれ、私もそちらに電話した。
テント場代はなんとトイレと水代込みで今時破格の500円!
水はトイレの隣の洗面所から汲み放題。飲み放題。
飲み物類(水、ビール、ポカリスエット、コーヒーなど)は売っているそうだ。
ヒュッテ前にはテーブルとベンチあり。
トイレと洗面所は青い屋根の母屋の左側の別館?みたいな建物にある。
テント利用者は外部に通じているドアから直接入る。
男女共同で、片側に男性用小便器ずらーり反対側に個室ずらり、というタイプのトイレだ。
そこそこの広さなので、男性が用をたしているすぐ背後をすり抜けねばならぬ!という気まずさはなさそうだけど、
共同トイレは絶対無理!
という人は要注意。
ちなみに今回、小屋番さん含め男性が何名か滞在していたはずだがトイレと洗面所では誰とも出会わなかった。
笹原に囲まれた小さな小さなテント場
テント場はヒュッテ建物前から笹の茂る道を少し下っていたところにある。
たいした距離ではないけれど、ぼやーっと歩いていると笹の根っこでつまずきそう。
ぱっと見るときれいな道に見えるけれど、笹の根があちこちにはびこっており、ひっかかりそうなのだ。
そうでなくても最近は年のせいかよくつまづくので、夜は気をつけよう。
笹原の中のテント場はかなり小さくて、きちきちに詰めてソロテント5張り程度で限界だろうか。
私が到着した時、一番奥にテントが一張り。
すぐにご夫婦らしきカップルが帰ってこられた。
近辺を登っておられた様子だ。
静かな山が好きな私だけれど、このテント場にひとりぼっちはちょっと寂しいな、と思っていたので一安心。
「今日は2組だけだからどこに張ってもいいそうですよ」と聞き、一番見晴らしが良さそうなところを選ぶ。
テント場は東に面しているので天気が良ければとても美しい朝日が拝めるらしいのだ。
テント内から外が見えるように東側に入り口を合わせてテント設営にかかった。
▼テント場から東方面の眺め。
天候次第では本州まで見渡せるらしい。
地面は小石混じりの土と丈の短い草で初心者の私にも張りやすいが、一見平らに見えるけれど実は少し傾斜がある。
それに気づかず設営を終え中に入ってみると、微妙な傾きを感じた。
悩ましい。
これは張りなおすほどの傾きなのだろうか。
小屋番さんに、今夜は雨が降るかもしれないからしっかり対策して寝なさいよ、と言われていたので、かなり慎重に張ったテント。
珍しくぴっちりときれいに張れたのも惜しい。。
私は生来とても無精者でめんどくさがり屋だ。
この時もしばし悩んだ末
「ま、これくらい大丈夫でしょ。」
と結論付けてそのまま一の森山頂へ出かけてしまった。
しかし、この無精さ、いい加減さのため長くて辛い一夜を過ごすことになろうとは!
テント場のまわりは
笹
笹
笹
そして白骨樹
一の森山に登って見下ろすと、すっぽりと笹原に囲まれているのがよくわかる。
険しくはないけれど、深い山に包まれた静かな静かなテント場だ。
登山口から(リフトで楽して)わずか2時間でこんな静かなテント場で過ごせるなんて、なかなかの穴場ではないだろうか。
テント場の周りは笹っ原は陽があたると笹がきらきらと美しい。
地図を見ているとこの一の森のまわりにも歩けるコースがたくさんありそうだ。
歩きまわってみたいけれど、慣れないテント泊のため早めに戻ることにした。
ぜひまた訪れてテントを起点に笹の間をわっしわっしと歩いてみたいな。
マットから滑り落ちながら過ごす強風の夜
散策を終えてテントに戻り、しばしのんびり。
お隣のご夫婦も静かに過ごされているので本当に静かだ。
時折聞こえる鳥の声とさやさやと笹の葉が揺れる音しかしない。
絶景でとは言えないけれど美しい景色と雲を眺めて、、
最高!
ざわざわと風の音、、、あれ?
なんか風が強くない?
雲はあったがほぼ無風で穏やかだった日中からは急転。
夕食を終えたころから、風がどんどん強くなってきた。
天候によっては夕日を目当てにもう一度一の森に登ろうか、と思っていたが、風の強さにすっかりやる気を失う私。
さっさとあきらめて洗面道具を持ってヒュッテへ向かうと、奥テントのご夫婦とすれ違った。
一の森山頂に行ってきたが夕日は見えなかったとの事。
アクティブなお二人だ。
東方面の雲はほんの少しピンク色に染まっている。
シュラフに脚を突っ込んでだらだらを楽しんでいると風は更に強くなってきた。
もはや強風というレベルである。
もう寝てしまおう。
本格的にシュラフにもぐりこみ、うとうとしかけると、
あ。
やはり傾いてる。
身体が少しずつ右側にずれていくのがわかる。
これはどうしたものか。
どうしようもない。
今更張りなおす気力はなし。
なによりこの強風である。
気力に満ち溢れていても絶対張り直しなんてできない!
マットの位置を変えてみるけれど効果はあまりない。
おのれの無精さを呪う。
めんどくさがらず気づいた時に張りなおしておけばよかった。
悔やんでも仕方ないので、あきらめて寝る。
マットからずり落ちる。
体勢を整え寝る。
激しい風の音で目が覚める。
寝る。
マットからずり落ちる。
体勢を整え寝る。
激しすぎる風の音で目が覚める。
以上を延々と繰り返す。
風は本当に激しく、テントがばたばたばた!とはためいているのが感じられる。
寒くはないのが幸い。
小屋やテントではたいてい夜中にトイレに行くのにこの日に限って全く尿意を覚えなかったのも幸いだった。
雨も降っていないようだ。
強風時ってヒュッテに避難させてもらうべきなのだろうか。
でもテント立ってるし。
テントが吹き飛ばされたら避難?
吹き飛ばされたら時すでに遅し、よね。。
そして気がつくとあたりがほんのり明るくなっており、
夜が明けた。
昨夜から吹き荒れる風は明るくなっても止むことがなく、
テントの入り口をめくってちょいと外を覗いてみたが空には雲。
朝日は拝めそうにないし再びシュラフにもぐりこむ。
このまま風が止まなかったらテントの撤収大変だなあ困ったなあ。
あの素敵な稜線を歩くのもきついだろうなあ。
と思っているうちに眠気に襲われた。
とりあえず夜を乗り切ったことで安心したのか、かなり深く眠ったみたい。
マットからすっかりずり落ち状態で熟睡し、ふと覚醒した。
静かだ。
風が止んでいる?
あれだけ吹いていた風が止み、静謐。
起きだして外へ出てみると相変わらず天気は今一つだが静かな朝が広がっていた。
テントにも特に異変は見られない。
しっかり耐え忍んでくれたようだ。
トイレも兼ねて水を汲みにヒュッテへ向かう途中でお隣さんとすれ違った。
「風すごかったですね」と話しかけてくださったので少し立ち話。
どうやら、私がびびっていただけではなく、「やばいくらい」の強風だった様子だ。
テントが無事で本当によかった。
ご夫婦はどうやらもうひと歩きしてきたみたい。
それにしてもアクティブなご夫婦ですな。
アクティブ夫妻はじゅーじゅーと肉を焼きだした!
朝からBBQか、いいですなあ。
私はお湯を沸かして適当にレトルトで朝食をすませ、
テントを撤収して出発だ。
一の森は体力に自信のないテント初心者にもおすすめできる
これまで私のテント泊経験は
雷鳥沢、徳澤、酸ヶ湯温泉のみで長い時間・距離は歩いたことがなかった。
体力も経験値も低い、か弱いたおやめだ。
テント泊で北アルプス縦走!なんて大それた野望は抱いた事すらないが、もう少し歩いて静かな山で過ごしてみたいな、と思って目をつけたのがこの一の森テント場だった。
ちゃんと歩けるか不安だったのだが、緩やかな道のりは整備されとても歩きやすかった。
・リフトを使えば登山口から2時間程度。
・道のりは楽に歩けるだけではなく美しくて景色も良い
・途中で水の補給やトイレ使用が可能
・剣山も堪能できる
・テント場では静かすぎる山にたっぷり浸れる
逆に言えば、
・他にたくさんの登山客がいるところで安心してテント泊がしたい
・静かすぎるテント場は不安
・男女共用トイレはどうしてもむーりー!
という人にはお勧めできない。
*テント場ではスマホの電波状況は悪く、ほぼ入らないと思っておいた方がよさそう。一の森頂上ではアンテナしっかり立っていた。
テント泊は初心者で体力にはあまり自信がない。
でも少しは歩いてみたい、山に包まれたところで静かなテント泊してみたい。
そんなあなたにならぴったりなテント場だと思う。