命短し、歩けよたおやめ

体力なし筋肉なし経験なしのたおやめが老朽化と戦いながらはじめた登山の記録

日本で一番高いところに立ってきた_4:It Follows (イット・フォローズ)歩行で頂上を目指す【富士山3776m】

吉田ルート七合目から頂上への道のり

【登った時期】2021年08月上旬
【同行者】なし

 

体力があまりなくて時間はわりとある私の【日本で一番高い山挑戦】はお鉢巡りもゆっくりできるように2泊3日の計画。

初日に七合目の山小屋に宿泊し、2日目はいよいよ頂上を目指す!

7合目からの美しい御来光

七合目トモエ館で迎えた2日目の朝。
頂上での御来光を目指して出立する人たちで真夜中には一時やや騒がしかったけれど、そこそこ睡眠もとれた。
私は御来光は山小屋で見るので4時に起床。
朝食用に前夜夕食時に配られていたパンを食堂?で食べ、出発の準備をすませて小屋の前でスタンバる。
ほとんどの宿泊者が夜中に出たらしく、静かな穏やかな小屋前にて数人で静謐な日の出を待つ。
5時前に東の彼方がオレンジ色に染まってきた。。

とてつもなく広い地平線から太陽がゆっくりを姿を現した。

昨夜、山小屋スタッフから「天気が良いと山中湖に太陽が映って太陽が2つ見える」と聞いていたのだけれど、、

無念。

こんなに晴れているのにどういうわけか、山中湖の上にだけ雲が居座っておる。
が、そんなこと気にならないほどの美しい御来光。

それにしてもなんて広いの関東平野。
まるで海からの日の出を見ているみたい。

このままぼんやり眺めていたいけど、出発の時だ。

七合目から八合目への道のり

七合目から八合目の道のりはいきなり岩場からのスタートだ。
トモエ館の横手から登る結構な急登が朝イチの体にこたえる。
富士山頂まで3.6キロ。
標高差は約1000m。

振り返ればすっかり青く色を変えた空の上に白い太陽が輝き、
シルエットを現した山の向こうに海の様に雲が続いている。

あまりの美しさに時々背後を眺めながら登るのでなかなか足が進まないっ。

矢印をたどって岩場をはいあがり、

鎌岩館の前を通ってまた振り返ってみると

あっ

ダブル太陽!

太陽がの位置が上がったせいか、山中湖に反射する太陽が輝くのを見ることができた。
魅惑の光景。

更に山小屋の軒先を通って進んでいく。
朝の掃除中の小屋が多くどこも静か。

しばらく登ると青空に映える赤い鳥居が見えた。
神社だろうか。
岩場の道をゆっくり近づいていく。

やっとこさ鳥居にたどり着いた。
神社ではなく鳥居荘という山小屋だ。

まだまだ続くよ見上げるような岩場。
しっかり手を使ってゆっくり登る。

鳥居の次に気になる赤い物体。
今度は唐辛子のようなあれは何だろう・・・

山頂まで2.9キロ。
まだ1キロも進んでいない。

山頂に向かって左側はなだらかな山肌

振り返れば山中湖

右側は岩の壁のように見える斜面。

謎の唐辛子もどきの下まで来た。
近づいてみるとどうやら寝袋のようだった。
この小屋は布団代わりに寝袋を使うみたい。
青空の下ほかほかと干されている。

八合目。富士山頂上浅間大社の境内へ

よちよち歩いてやっと八合目に到着した。

富士山の8合目から上は富士山頂上浅間大社の所有する奥宮境内地となっているので、ここからは神社の境内を歩く事になる。

なんという広大な境内。

太子館の入り口に【標高3100m】とあるのを発見。
いつの間にか私のこれまでの最高高度到達点:立山大汝山3015mを超えていたが、
今のところ体調に変化なし。

八合目から見る山中湖にも変化なし。

八合目の山小屋太子館には八合目救護所が併設されていた。

なんだかとっても歩き易そうな道が現れたぞ。

と思ったら【ブル道】とある。
ブル道ってブルドーザー専用道?
頂上まで続いているのかな。

登山者はこちらの道だが、これもそれほど険しくない。

8時を過ぎ空は青さを増してきた。

気温も急上昇。

赤土の山肌の上、青い青い空。
ちょっと傾斜がはげしいけど、西部劇のシーンみたいだ。

振り返れば山中湖と登ってきた道。

標高3250m【富士山天拝宮】に到達。
2740mのトモエ館から500mほどの標高を登ってきたことになる。
やっとちょうど半分くらい。

暑い。

抜けるような青空の下、じぐざぐ道をひたすら歩く。

It Follows (イット・フォローズ)歩行でじわじわ登る

3776mを目指す富士登山にあたり、できる限り立ち止まることなく歩き続けられるペースで歩こう、と決めていた。
苦しくて立ち止まってしまうほどの息切れや動悸を起こさない程度のペース。
具体的に表すのは難しいけど、平地を普通に歩いている時より少ししんどいくらい。
息切れや動悸が激しくなってきたらペースを落とす。

太陽に炙られながらそんな風に歩いた。

この人歩いてる?つまづいてるの?と思われかねないのろのろペースだが、
「一定ののろさ」で歩き続け、
30分に1回程度立ったままザックもおろさずに水分補給。
2時間に1回日焼け止めを塗りなおす。

あとは腰を下ろさずにゆっくりゆっくり歩き続けた。

 

何度もしつこく書いているけれど私は本当に歩くのが遅い。

六甲山でも他の山域でもいつも老若男女に抜かされながら歩いており、追い抜いて行った人たちとは二度と会うことはない。

というのは、もちろん彼らに追いつくことがないからだ。

まさに一期一会

 





なんと、ここ富士山では私を追い抜いて行った人たちに私が追いつく、あまつさえ抜き返すという仰天の事態がたびたび発生するではないか。

若さにまかせ体力を生かしてぐんぐん飛ばしていった青年が岩陰にぐったりと座り込んでいる。
私はその横をのろのろと通り過ぎる。

やがて復活した青年がまた私をぬかす。

しばらくすると彼がまた座り込んでいる。

そのそばを再びちんたらちんたら通り過ぎる。

あっ、あのおっそい女の人、さっきぬかした人のような気がする。
あんなにとろいのに追いつかれたーーっ

マジ?また抜き返された!?

と彼は思っていたかもしれない。

灼熱の山肌を歩きながら、私の頭には数年前に見たIt Follows イット・フォローズというホラー映画が浮かんでいた。

 

It Follows イット・フォローズのざっくりしたあらすじ

主人公は正体不明の「それ」に追いかけられる。
「それ」に追いつかれると死んでしまうので、必死に逃げる。
「それ」は不気味な人間の姿をしておりゆっくり歩いて来るので、走って逃げたり乗り物で移動したら一時的には振り払える。
だがしかし!「それ」はとにかくどこまでもどこまでもどこまでも、、、追いかけてくるのだ。ゆっくりと。。

 

私は、「それ」になった気分でゆっくりと、しかし決して止まらず歩き続けた。
そして何度も何度も体力勝負の若者を追いつめた、、

この歩き方をIt Follows イット・フォローズ歩行と名付けようと思う。

 

It Follows 歩行で何人かと抜きつ抜かれつしているうちに、山小屋群が見えてきた。
本日の宿:本八合目トモエ館も近い。

本八合目に荷物を置いて頂上へ

本八合目トモエ館に到着。
着替えなど必要ない荷物を預けてすぐに出発。
(ちなみに七合目トモエ館に泊まった人なら本八合目には泊まらなくても荷物を預かってくれるらしい。その場合は下山時に回収する)

山頂まで1.2キロ

頂上まで最後の山小屋:御来光館を通り過ぎた。
標高は3450m。

左側にはすぱっと斜め45度くらいの角度で山肌と空。
そういえば、登山中の山の斜面をこんな風に延々と見ながら登るというのは珍しい体験だ。
巨大な円錐形の山を登っていることを実感できる。

上を仰いでみると、頂上らしきものが見えてきたような気がする。
あの要塞っぽいのが頂上?

変わり映えのしない背後の景色。

かすかに鳥居が見えた。
登山道のあちこちで座り込んでいる人が増えてきた。
お互いにもたれあって寝ている二人連れ。
「もう歩けない」と半泣きの子供を励ます親。
地蔵の様に固まっている若者。

私は幸い高山病の症状は無く、It Follows歩行を続ける。

九合目迎久須志神社
標高3600m

登ってきた道は絵に描いたように九十九折り。

山頂まであと200m!

200mといえばこんな私でも平地なら2分以内で歩ける距離。

なんと遠い200mだろう。

最後は再び急勾配の岩場の道だ。
座り込んでいる人も更に増加。

日の丸を確認。
あそこが頂上だと確信する。

狛犬に守られた最後の鳥居。
ずっと抜きつ抜かれつ歩いてきたソロ登山男性とここで一緒になった。
喜びのポーズの写真を撮りあった後は、譲っていただき私が先に鳥居をくぐった。

鳥居をくぐって久須志神社の前に出た!

到着!!

青い青い空に日の丸が目に沁みる。
心にも沁みる。。

日本で一番高いところでひらめく日の丸だろうか。