七合目までの道のり
【登った時期】2021年08月上旬
【同行者】なし
体力があまりなくて時間はわりとある私の【日本で一番高い山挑戦】はお鉢巡りもゆっくりできるように2泊3日の計画。
初日はスバルライン五合目から七合目の山小屋まで、体を慣らしながらゆっくり登る。
短い樹林帯を抜け遮るものなしの六合目へ
お馬も通る平坦な広い道を20分ほど歩き【泉ヶ滝】という分岐に到着。
ここから山道っぽい登山道に入る。
しばらくは樹林帯。
ほんの少し傾斜が出てきて、ゆるっと登っていく。
短い樹林帯を抜けると落石除けらしきシェルター?トンネル?が現れた。
ここから先はもう日差しを遮るものはないようだが、曇りがちのため太陽は感じられず暑くはない。
【六合目】に到着。
現在は六合目だが、江戸時代までは五合五勺だった地。
かつて【砂ふるい】【砂はらい】【砂はたき】などと呼ばれた場所で、なんとなく妖怪っぽさが漂うが、富士山の砂を体からはたき落とすという意味らしい。
妖怪が出るわけではなさそうだ。
かつての下山者は火山灰の下山道を一気に駆け下り、ここにあった小屋でわらじを新しいものに履き替えたのだとか。
▼六合目のここに書いてありました
六合目には富士山安全指導センターがあり、健康状態の確認と安全登山指導を行っていた。
七合目の小屋を予約している私は簡単に通過。
この時間には弾丸登山者はまだいないようだが、八合目の中でも標高の一番高い小屋まで行くという男性が「この時間からでは遅すぎる」と注意を受けていた。
トイレあり。
六合目に着いたあたりから雲の切れ目から青空が見えだした。
富士山山頂まで5.2km!
単調なジグザグ道をゆっくりと
ここから登山道は一気に単調に。
落石防止のための大きな壁のような柵にそってジグザグの道が延々と続いている。
ときおり白い霧のようにふわーーっと流れてくる雲に包まれて視界が真っ白に。
河口湖駅から見たあの雲に包まれて歩いているのかと思うと、不思議な気分。
雲はまたさーーっと通り過ぎ、晴れて明るくなったりを繰り返すうちにどんどん青空の面積が大きくなってきた。
再び湖も見える。
長いジグザグ道はきつい傾斜ではないけれど、体力筋力温存のためとにかくゆっくりゆっくり。
小さな歩幅で進む。
がんがん登っていく人も多く、私もつい足を早めそうになる。
いやしかし、慌てない慌てないの一休さんの教えを守って行くぞ。
時々現れる階段は、段差の低い場所をピンポイントで狙う。
登山道の階段はたいてい端の方が段差が低くなっているので、しっかり見極めてそこを登る。
多少遠回りになり歩数が増えてもかまわない。
小さなことだけど、積み重ねると直線最短ルートを登るのと疲れ方が違ってくると思う。体力に自信のない私は少しでも疲れないよう富士山以外でも実践。
低段差ゾーンを探して淡々と歩き続け、、ふと気がつくとジグザグ道の向こうに七合目らしき複数の小屋が見えてきた!
いつの間にかふわーっと流れていた雲も消え頭上には青空が広がっている。
岩場の向こうに七合目の小屋たち
ジグザグ砂利道が終わり、突然急な岩場が姿を現した。
五合目インフォメーションで「最初の岩場についたら七合目小屋まではストックは必要ないので片付けて下さい」と教えてくれたのがここだろう。
意地でもストックを使いたいのか、片付けるのが面倒なのか?
ストックを持ったまま登っているグループがいたけれど結構難儀しているようだった。
結構急なので、ストックは仕舞ってきちんと両手を使う場所と感じた。
見上げるような急勾配。
富士山の小屋とトイレ
富士山の山小屋は登山道に沿って建っているので、各小屋の前というか軒先を通って進んでいく。
街道沿いに宿が並んでいるような感じ。
どの小屋でもお金を払ってトイレを使用できるし、軒先では休憩ができるが、小屋内での休憩は宿泊者に限定されているところが多いみたい。
小屋に入ろうとする登山者がいると、
「お疲れ様ー。宿泊のご予定ですか?」と声がかかり、違うと答えると
「休憩は外でお願いしますね」とやんわり断っている。
飲み物を購入した人ならちょこっと中に入れてくれてもいいのにな、と最初は思ったが、
宿泊者以外を受け入れると、小屋が休憩者で長時間占領状態になるのを避けるためなのかも。
以前テレビで、弾丸登山者が夜間にトイレを休憩のために占領してしまい本当にトイレを使用したい人が入れないという事態になっているのをみたことがある。
トイレのドアを開けると中にみっちみちに人が詰まっており、、、
ホラー映画みたいな状態になっていた。
もちろん個室にも人がみっしり。
トイレに「雨宿り禁止!」の貼り紙が貼られていたり、鍵を借りないとトイレに入れなかったりと小屋側も色々対策しているみたい。
七合目小屋で過ごす夕暮れのひととき
一休さんに導かれながらいくつかの小屋を過ぎ、16時前に本日のお宿:七合目トモエ館に到着!
ゆっくりゆっくり歩いて2時間半ほどの道のりだった。
▼標高2740m
ロビー?には【まねき】という木の札がずらりと並び、信仰に結びついた富士登山の歴史を感じる。
まねき:富士講の名称やシンボルマークを記した木札や布
青い法被のおじさんに案内され予約していた個室へ。
急な階段を2階に上る。
簡素だけれどきれいに片付いて清潔。
「この標高の山小屋ですから、普通の宿の個室とは違いますので…これを個室とよんでいます」
と説明されたのは、
「こんなの個室じゃないーーっ」と文句を言う人がいるからだろうか。
立派に個室!
ちゃんと壁で仕切られているし入り口にカーテンもついている!
電灯はもちろんコンセントまであるし、大満足。
鏡を置いてくれているのが心憎い。
あ、窓がないので閉所恐怖症の人にはきつい個室かもしれぬ。。
布団もふわふわ軽い羽根布団でとても快適。
寒かったら毛布の貸し出しもあるとのことだったが、この日は充分暖かく眠れた。
▼ちなみに通常の寝床はこんな感じ。
狭い廊下に面して並ぶ蚕棚式2段の寝床。
垂らされた簡易の仕切りは今年から導入されたものだろう。
これまではスペース全体に詰められるだけ詰め込まれ、富士山経験者が口をそろえる「地獄の山小屋」になっていたと思われる。
荷物を整理し、着替えた後はゆっくり高度2700mを満喫だ。
トモエ館の軒先にも他の小屋と同様ベンチが連なっている。
降り注ぐ太陽の下、半袖でも大丈夫なくらいの暖かさだ。
沸き立つ雲を眺めながら暖かいチャイをいただく幸せ。
さっき登ってきた道を見下ろして、よろよろと登ってくる人々を見守る幸せ。
大好きな「雲と空を眺めながらぼんやり」する幸せ。
いつもは見上げている雲たちを見下ろす極上の幸せ。
七合目小屋の夜
いくつもの幸せを味わっているうちに続々と他の宿泊者も到着し、18時ごろ夕食時間となった。
夕食はおでん。
基本はカレーで、私以外の人たちは全員カレー。
トモエ館に連泊(明日は八合目トモエ館)する私には「牛丼かおでんに変更できますよ」と声をかけてもらえたので、おでんを選択。
カレーは好きだけど、日替わりメニューは有難い。
近くの席の少年のうらやましそうな視線を感じながら美味しい出汁まで完食。
夕食を終えたころからどんどん気温が下がる。
ダウンを着こんでまた雲を見物。
牡蠣の殻らしきものが大量に積んであったので、聞いてみるとトイレの浄化に使うそう。
牡蠣すごい!
日中は見えていた登山道もすっかり影の中。
もこもこと生き物のような雲はずっと見ていても飽きない。
やがて日没。
東の方に目をやると初めて見る不思議な空。
ピンクと青のグラデーションが放射線状に伸びている。
後光が射しているような何とも幻想的な空。
ありがたや、ありがたや。。と唱えたくなるような、、
さすが日本一の山は色々なものを見せてくれる!
いや、富士山関係ない現象かもしれないけど、そういうことにしておこうっと。
日没を見届け20時には就寝。
夜中にトイレに出た際、空を見上げると満天の星!
まさに降るような星を見上げる私の横を、時折通り過ぎる登山者達。
そして山頂側を振り返れば弾丸登山者のヘッドランプが煌々と輝いていた。