命短し、歩けよたおやめ

体力なし筋肉なし経験なしのたおやめが老朽化と戦いながらはじめた登山の記録

滋賀県で一番高いところに立ってきた:歩いても歩いても。。【伊吹山1377m】

伊吹山:JR近江長岡駅から路線バスにて上野登山口~山頂~登山バスにて立ち寄り温泉(ジョイ伊吹)~JR米原駅

【登った時期】2021年5月下旬
【同行者】なし

f:id:Bibendumaru:20220116221004j:plain

芋虫毛虫天国から逃れ、滋賀県最高峰の伊吹山へ

六甲山で降り注ぐいもけむ勢に敗北しみじめに撤退し、行き場を失った私が目をつけたのは伊吹山だった。

滋賀県最高峰の伊吹山はそのうち登ってみたいと思ってはいたが、遠い、アクセスがめんどくさそう、夏は暑そう、、と何となく行く機会がなかった山だ。

かつてはスキー場があった山なので樹林帯が少なく、地図やWEB情報を見ると2合目あたり以降は草原を登っていくみたい。
山頂までずっとストレスを感じながら歩く事はなさそうだ。

万が一「芋虫毛虫ゾーン」があっても、短距離なら最悪傘をさして突っ切ればよし!と決心した。

ルートはメジャーな上野ルートを選択。

登山口までの公共交通機関使用のアクセス方法で最後まで迷ったのがこの2つ。
①JR米原駅から登山バス(湖国バス)

 2021年度の場合:運行期間は春山シーズンと夏山シーズンで梅雨の時期はお休み。
 JR米原駅8:15~伊吹登山口8:50、所要時間約35分
 片道800円
 予約必要(電話して確認したが、空席があれば予約が無くても当日乗車可能との事)

 *復路はジョイ伊吹という日帰り温泉にも停車(入浴料金が半額になる)してくれるので、入浴する場合は1時間後の便に乗ればよい。

 *頂上付近のお花畑ハイキング向けに9合目スカイテラスまで行く便もある。

②JR近江長岡駅から路線バス

 長岡登山口線で伊吹登山口下車
 1時間に1本程度、所要時間約20分
 370円

散々迷った挙句、JR米原駅に8時15分に到着するのはかなり厳しかったので②に決定。
近江長岡駅9時10分のバスを狙うことにした。

*JR近江長岡駅から徒歩1時間で歩けるようなので、健脚でJR近江長岡駅に早朝着ける方にはこれもお勧めかも

分かりやすい登山口にはきれいなトイレもあり

JR近江長岡駅にはコンビニはないが、自動販売機はあり。
小さな駅なので改札を出るとすぐにバス停がある。


窓から見える伊吹山にワクワクしながら20分ほどでバスは【伊吹登山口】に到着した。

f:id:Bibendumaru:20220116182908j:plain

 

帰りのバス便を確認しておく。
できれば16時10分。遅くとも17時04分には乗りたい。

f:id:Bibendumaru:20220116183326j:plain

 

登山口の三ノ宮神社。

f:id:Bibendumaru:20220117213401j:plain

 

きれいなトイレで用をたし身支度をすませていざ登山口へ。

f:id:Bibendumaru:20220116182607j:plain

f:id:Bibendumaru:20220219121400j:plain

f:id:Bibendumaru:20220116182917j:plain

 

登山口の脇にある受付で協力金300円を払い、登山届を出した。

f:id:Bibendumaru:20220116182610j:plain

 

協力金を支払うともらえる登山マップの表紙にはなぜか白い猪。
その理由は後で判明するのだけど、この時は単なるゆるキャラかと思ってました。
ごめんなさい、伊吹山。
f:id:Bibendumaru:20220116185055j:plain

こんな感じで、お花畑の詳細情報も載っている。
迷わなそうな一本道のルートとはいえ一応地図は用意していたが、持参した地図よりこちらの方がわかりやすい。

f:id:Bibendumaru:20220116185059j:plain

 

ここからが本格的な山道。

山頂までは6キロだ。

いざ!
f:id:Bibendumaru:20220116182618j:plain

最初は樹林帯ではあるが、針葉樹のためか芋虫の見当たらない安全地帯だ。
涼しく快適。

f:id:Bibendumaru:20220116182626j:plain

 

針葉樹林を抜けるとぱあっと明るい1合目に出た。

いかにも「昔スキー場だった」雰囲気あふれる景観だ。飲み物や軽食もあるみたい。
バスからは見えていた伊吹山の姿はここからは見えなくなっていた。

f:id:Bibendumaru:20220116182630j:plain

 

この辺ゲレンデだったのかなあ、、などと思いながら草原を歩いていくと、
上方の草原の中を何かが走っていくのが見えた。

鹿だ

数頭の鹿の群れが軽やかに草原をつっきりあっという間に見えなくなった。

f:id:Bibendumaru:20220116182634j:plain

これまでも登山中に鹿を見かけたことはあるが、たいていにらめっこになってしばらくお互い固まった挙句に、鹿側が茂みに消えていく、という感じ。
こんな風に爆走しているのを見るのは初めて。

野生の王国みたい。。

鹿が増えているとはあちこちで聞くが食害も激しいようで、伊吹山名物のお花畑も被害が甚大とのこと。

 

ぱぁ~~ぱっぱっぱっぱっぱっぱぁ~♪
とぅ~~とぅとぅとぅとぅ~♪

野生の王国のテーマ♪
を心の中でくちずさみながら遮るもののない草原の中を進み、
振り返るとさっきまでいた1合目が見渡せる。

f:id:Bibendumaru:20220116182638j:plain

ゆるゆる登って2合目に到着。

さてここからが個人的に緊張を強いられるポイントになるはずなのだ。

唯一の恐怖ポイント2合目樹林帯をスリップストリーム作戦で突破

初夏の伊吹山登山の下調べをしている際に、

「2合目の樹林帯に毛虫がのれんになっていた」

「2合目あたりに毛虫の木があった」

という身の毛もよだつ情報があったのだ。

ここか。。。

2合目の看板を前に念のために傘を取り出し、さっきまでの鼻歌モードはどこへやら、探検隊モードに切り替え緊張感を持って進む。

f:id:Bibendumaru:20220116182642j:plain

2合目の看板からカーブを曲がりしばらく行くと、木々が覆いかぶりちょっと薄暗い道が続いているようだ。

嫌だなあこの感じ、、と思っていると。

・・・見えてしまった。

足元に転がって身をよじる奴が。

ふらりふらりと木からぶらさがる憎い奴が。

 

しかし、落ち着いてよく見ればその数は少ない。
下調べした情報にあった「のれんのように」は下がっておらず、
先日の六甲山登山口で見た奴らの数とバリエーションに比べれば大したことはない!
傘をさして一気に突っ切るか、じっくり見極めよけながら進むか考えていると、

救世軍が現れた!

体格の良い数人の若い男性グループだ。
明るく「こんにちは!」と通り過ぎていく、、、

これだ!

私はすかさず彼らの後ろに飛び込んだ。

他の人から見たらまるで「同じグループ」に見えるくらい最後尾の男子の後ろにはりついて歩く。
もし彼がふと気配を感じて振り返ったら「うわっ、近っ」とのけぞるかもしれない。

そう、上空から垂れている奴らは背の高い彼らに受け止めてもらうという

スリップストリーム」作戦だ。

足元に転がってる奴らは見ないことにする。

それにしてもすごいスピード。
体力不足のたおやめには非常にきついが、ここで離れるわけにはいかない。
息を切らせながら全力で着いていき、、

抜けた!

暗い樹林帯を抜け、再び青空の元、草原に出た!

f:id:Bibendumaru:20220116182646j:plain

 

後ろに変な中年女に張り付かれ盾にされていたとも知らず、明るい救世軍達はあっという間に去っていった。

ありがとう、青年たち!

そして、緊張感の抜けた私の目に伊吹山の全容がどーーんと飛び込んできた!

やっと見えた、伊吹山の姿!

あれ、しかし、思ったよりまだ遠いな。

なんだかたっぷり歩いた気がするのに、まだあんなに遠いのか。

 

歩いても歩いても。

しかし道はとても気持ちがいい。
存在感たっぷりな伊吹山を眺めながら歩きやすい草原の道を行く。
再び鼻歌モード。

しかし鼻歌なんぞ歌ってのんきに歩いていられたのもこの時までだった。

ここから伊吹山はそのどっしりとしたいかつい姿をずっと見せてくれるのだが、
見せてくれるのだが、、

歩いても歩いても

前に伊吹山

後ろに自分が歩いてきた道と琵琶湖

という変わり映えのしない長ーい道を歩いていくのは結構気力を必要とするのであった。

3合目。
変わらぬ伊吹山の姿。

鹿の食害から高山植物を守る為、フェンスが張り巡らされている。

f:id:Bibendumaru:20220116182650j:plain

トイレとベンチあり。
山頂まで3.6キロ。

f:id:Bibendumaru:20220116182654j:plain

 

4合目

再び林間に入るが、空が見えまばらに茂っているので安心して登る。
このあたりからやっと山道っぽくなってきた。
f:id:Bibendumaru:20220116182658j:plain

f:id:Bibendumaru:20220116182706j:plain

 

5合目。

またゆるい登りに。
山頂(付近)は見えているのだが、歩いても歩いても近づく気がしない。
f:id:Bibendumaru:20220116182710j:plain

 

振り返ると歩いてきた道が長く伸びている。

f:id:Bibendumaru:20220116182702j:plain

 

5合目付近にぽつんと自動販売機があった。
シュールな光景だがこれも元スキー場の名残だろうか。

f:id:Bibendumaru:20220116182714j:plain

 

そういえば、伊吹山は「花の山」。
高山植物目当ての人も多いと聞くが、この日目についたのは数種類のみ。

f:id:Bibendumaru:20220116182718j:plain

f:id:Bibendumaru:20220219121357j:plain


しばらく歩いて振り返ると、歩いてきた道と琵琶湖が長く伸びている。

f:id:Bibendumaru:20220116182722j:plain


きれいな避難小屋があった。
遮るもののない伊吹山。もし雷が近づいてきたらぜひここに逃げ込みたい。

f:id:Bibendumaru:20220116182726j:plain


6合目。
f:id:Bibendumaru:20220116182730j:plain

 

しばらく歩いて振り返ると、歩いてきた道と琵琶湖が長く伸びている。

f:id:Bibendumaru:20220116182734j:plain

このあたりからじぐざぐに斜面を登りゆく。

f:id:Bibendumaru:20220116182738j:plain

 

7合目

f:id:Bibendumaru:20220116182742j:plain

 

8合目

f:id:Bibendumaru:20220116182746j:plain

 

しばらく歩いて振り返ると、歩いてきた道と琵琶湖が長く伸びている。

f:id:Bibendumaru:20220116182750j:plain

 

覚めない夢の中を歩いているように、振り返っても振り返っても同じ景色。
心が折れそうになってきたときようやく頂上が近づいてきた(気がする)

f:id:Bibendumaru:20220116182754j:plain

 

しばらく歩いて振り返ると、歩いてきた道と(以下略)

f:id:Bibendumaru:20220219121403j:plain

 

頂上遊歩道のはじっこまで到着!

f:id:Bibendumaru:20220116182758j:plain

 

しばらく歩いて振り返ると、歩いてき(以下略)

f:id:Bibendumaru:20220116182802j:plain

やっと頂上らしきものが見えてきた。
気力を振り絞ってお花畑っぽいところを突っ切る。

f:id:Bibendumaru:20220116182806j:plain

オールバックの日本武尊がいる山頂に到着

到着!!

登山口の標高220m、山頂1377mなので標高差は1157m。

六甲山に登る時の標高差より200mほど高いだけだし、難しいところもないのだが、精神的にぐっと堪える長い道のりだった。

ここが滋賀県最高峰。

その滋賀で一番高いところにはなんだか変な像が立っている。

誰?

f:id:Bibendumaru:20220116182814j:plain

 

近づいてみると【日本武尊(やまとたけるのみこと)】だ。
【日本武尊】って「センター分けにして顔の左右でツインテールを八の字型にした髪型」のイメージがあるのだけど、この像はワンレン?オールバック?なのでどうもぴんとこない。
f:id:Bibendumaru:20220116182810j:plain

 

そもそも何で日本武尊がここにいるんだろう、、と思いつつ山頂を散策開始。
使用しなかったのだが、トイレは大きくて綺麗そうだ。

f:id:Bibendumaru:20220116182817j:plain

琵琶湖の方の展望はもうすっかり見飽きてしまった「歩いてきた道と琵琶湖」である。
登りながらさんざん見つくしてしまったので残念ながら感動は・・ほぼ無い。
f:id:Bibendumaru:20220116182825j:plain

登ってきた方と反対側の山頂は広々と開けた草原だ。
吹き渡る風にさらされけっこう寒い。
f:id:Bibendumaru:20220116182821j:plain

f:id:Bibendumaru:20220116182829j:plain

反対側。
たぶん福井か岐阜方面かな?

f:id:Bibendumaru:20220219121406j:plain

山頂には茶店が数軒あり、軽食や土産物を提供していた。
滋賀県最高峰でかつ百名山と思えないほどの賑わいだ。
(他の百名山はよく知らないけど)

色とりどりの各種ソフトクリームまで並んでいる頂上銀座。

f:id:Bibendumaru:20220116182833j:plain

 

帰路は登山バスで楽して下りる

ざっと頂上を巡るうちに足に違和感を覚えたので靴をぬいで確認してみると、靴擦れが数か所できていた。

手当てを行い、この後の行程を考える。

上野登山口には安全面とバスの時間を考えると16時過ぎには下りたい。
そうなると昼食を手早く摂り、すぐに行動しなければならない。

靴擦れの発生、入浴して帰りたい欲望、もう少し頂上にいたい事など考えて結論はすぐに出た。

湖国バスの登山バスで下りよう!

湖国バスに電話をかけてみると、今日は空いているので予約無しで大丈夫です、との嬉しい回答だ。

そうと決まれば昼食もゆっくりとろう。

昼食は持参していたが、風も強いし暖かいものを食べたくなってきたので頂上銀座のうちの1軒に入り、暖かい蕎麦をいただくことにした。
伊吹蕎麦には山菜がたっぷり。
f:id:Bibendumaru:20220116182836j:plain

 

蕎麦とお茶でくつろいだ後は、頂上銀座の近くにある「大乗峰 伊吹山寺 覚心堂」というお堂で御朱印をいただいた。

f:id:Bibendumaru:20220219155724j:plain

 

覚心堂の隣にふと目をやると、小さな犬小屋お堂に白い猪の像がみえる。
そういえば地図にも白い猪の絵が描いてあったよね、、、

その瞬間、私の脳裏に子供の頃読んだ「古事記のおはなし」が閃いた!
確か、日本武尊って伊吹山で猪と戦って死んじゃったんじゃなかったっけ?

f:id:Bibendumaru:20220116182844j:plain

 

伊吹山と日本武尊の伝説をざっくり語ると

日本各地を平定してまわり無敵を誇っていた日本武尊。
伊吹山の「荒ぶる山の神」を討ちに出かけるも、白い猪に姿を変えた神を「神の使者」と間違えて「へいへい、帰りに殺してやるぜ、ふふん」と舐めた態度をとったせいで神の怒りを買い、ぼっこぼこにされてしまう。
ぼろぼろになって故郷に帰る途中で力尽きて亡くなってしまい、その魂は葬られた墓から白い鳥になって飛んで行った。。

という悲しいお話なのだ。

教訓としては「いい気になって調子こいてたらあかんで」といったところだろうか。

 

そう思ってもう一度見ると、なんとも悲し気な顔をしているではないですか。。
変なオールバックとか思ってごめんね。

f:id:Bibendumaru:20220116182840j:plain

 

頂上を楽しんでいるうちに登山バスの発車時刻も迫ってきた。
【スカイテラス】方面へ下る。

f:id:Bibendumaru:20220219121351j:plain

なだらかな歩きやすい道なので、リズムに乗ってどんどん下りて行ける。
が、ここは日本武尊を思い出し、慢心せずに丁寧に。

f:id:Bibendumaru:20220116182848j:plain

f:id:Bibendumaru:20220116182852j:plain

最後は鹿よけのドアをきちんと閉める。
六甲山では猪対策だが、伊吹山では主に鹿対策の様子。

f:id:Bibendumaru:20220116182856j:plain

f:id:Bibendumaru:20220116182900j:plain

 

登山バスは高速バスみたいなとてもきれいな車両で席も広々していた。
乗客は驚くほど少なく10名もいない。

f:id:Bibendumaru:20220116182904j:plain

 

途中、立ち寄り温泉(ジョイ伊吹)に停車するので降りて入浴。
バスのチケットを見せると入浴料が割引になった。
立ち寄り温泉ぽくない公民館みたいな建物なのは、【薬草の里文化センター】内の施設としてお風呂があるからだ。
中は露天風呂もある普通の入浴施設。薬草湯も想像していたようなこってりくさい系ではなくて爽やか系。
とても気持ちよいひと時を過ごすことができた。

f:id:Bibendumaru:20220219121354j:plain

入浴後は、1時間後にくる登山バスに再び乗車してJR米原駅へ。

伊吹山は初心者にも楽しく登れる。だがしかし、、

伊吹山は難しいところもなく、登山口や頂上の施設も充実しており登りやすい山だった。
重厚な姿も素敵。
但し、前も後ろも変わり映えのない景色を延々と見ながら登るので、盛り上がりにかけることは否めない。

特に山頂に着いた時に

「あら、絶景!!」という感動はまったく味わえないことは確かだろう。

この感動をぜひとも味わいたいときは、とにかく頂上に着くまでは絶対に後ろを振り返らないことをお勧めする。

そうすれば、美しくきらめく琵琶湖と「あの道を歩いてきたんだ!」という新鮮な喜びを感じられると思う。

絶対に後ろを振り返らないというと、古事記のイザナギイザナミのお話を思い出す。
伊吹山はつくづく神話の似合う山だ。