阪急芦屋川駅~城山~荒地山山頂~芦屋ゲート
【登った時期】2021年04月上旬
【同行者】なし
荒地山の山頂をめざす
前回到達できなかった【荒地山の山頂】を目指す。
山頂からは芦屋ゲートへ下りてみるつもり。
青空の下、阪急芦屋川駅から芦屋川に沿って北上し、高座の滝と城山との分岐点を右(城山方面)へ。
巨大煙草がささっている、なんとなーく気味が悪い城山登山口にももう慣れた。
ゆるく登っているうちにあっという間に海を臨み、城山で小休止。
先客が多いこのベンチに珍しく人がいない。
ここでお茶でも飲みながらぼーーっと海を見ていたい衝動に駆られつつ、水分補給のみして先へ向かおう。
今回もコンパスの実践をするために、ここで荒地山山頂を目標にセット。
本格的な春も近い暖かな道。
どんどん歩いていると、変な筒が密集しているところに出くわした。
なにこれ?
覗いてみると、植物の葉が見えた。
禿山部分に植林するための苗木を守っているみたいだ。
やがて荒地山の姿が見えてきた。
木々の間に大きな岩の姿が見え隠れしている。
岩梯子を避けう回路へ、、、う回路ってこんなんだっけ
荒地山を眺めながらのゆるやかな道のりは終わりを告げ、荒地山名物【岩梯子】に到着だ。
前回、自力でなんとか登り切った岩梯子。
どうしようかと悩みながらここまで来たが、誰もいなかった前回と違い、今日はハイカーの姿がかなり多い。
私のせいで渋滞を引き起こすのも気が引けるため、う回路を進んでみることにした。
岩梯子の前を通り過ぎるとすぐに立ちはだかる岩々しい急登がう回路だ。
手袋をはめてゆっくり登っていく。
実はこういう登りがちょっと好き。
がらがらずるずる崩れてくる心配のないしっかりした大岩をゆっくりと登っていくのは冒険心を刺激されてわくわく楽しい。
好きなんだけど。
これでう回路、、、なんですね。
う回路とは何なのか、と思うほど結構ハードなのだ。またしても股関節の硬さを嘆きながら四肢を駆使して登る。
ゆっくりゆっくり登っていると、なんとこの鈍足の私が前を登っているハイカーに追いついた。
【う回路】にだまされた?らしいかなりの高齢男性だ。
同行者がいるらしく、その人に泣き言をこぼしながらも登っている。
前の方からは「あと少し、あと少しで終わるから」と励ます声が聞こえてくるが、こちらも高齢男性っぽい。
超低速の私でも追いついてしまうほどの弱々しさで、ふるふる登っている。。
お願いだからお願いだから落ちてこないでね。
万が一の際、巻き添えを食らわないように距離をとる。
自分もこんな感じで後続者に迷惑をかけているのかもしれないなあと改めて思うが、
私は背後にぴたりと張り付かれるプレッシャーに弱いので、後続者にはすぐに道を譲るようにしている。
しかしこの男性は必死過ぎて後ろに私がひそんでいることにも気づかない模様。
声をかけてもいいが、ここで追い越すのは危険なのでとりあえず彼が進むのを待つことにし、ちょっと下を見下ろしてみる。
前回ここを降りたはずなのだが、あまり記憶にないのはなぜだろう。完全にお尻をむけて降りたからかな。
しっかりと時間を取ってから先へ進むと安全地帯で休憩中の彼らに追いつき、安全に追い越すことができた。
最後に大岩をえいやぁっと登ると、本道に合流だ。
見覚えのある鎖を登って
絶景ポイントに到着!
ここでしばらくのんびり。
適当にうろうろして無人の岩を見つけたら、ごろんと仰向けになって休憩。
雲を眺めて至福の時。。
もっと倒れていたいけど、前回はここで遊び過ぎて山頂に行けなかったので適当に切り上げて出発だ。
荒地山山頂下で道に迷いつつ、山頂へ
さっそく山頂に向かおうとしたところ、道がわからなくなってしまった。
休憩できそうな無人岩を探してウロウロしているうちにはっきりした登山道から外れてしまったようだ。
このあたり、道のような岩の隙間のような、、が入り組んでおり、適当に道をたどっていると登ってきたう回路に戻ってしまったりする。
あちこちで他のハイカーが休憩していたりするので不安感はないが、道を見失ったのは確実。
そう、ここでコンパスの出番なのだ。
コンパスを信じて岩の間をくぐりぬけ、ひょっこりと小さな空き地に出た。
空き地からコンパスの指す方向に進むと本道らしき道に出た!
ありがとうコンパス!
道標は【最高峰】方面へ
【荒地山】山頂に到着した!
特に眺めがいいわけではなく、ゆっくり景色を見ながら休憩するならさきほどの大岩ポイントの方が良い。
一応ベンチがあり、そこには先ほどの高齢男性ペアがお昼休憩中。
写真を撮っていると私の直前をふるふる登っていた男性が話しかけてきたので少し会話をかわした。
どうやら私が彼を追い越したハイカーだとは気づいていない様子。
かなりお疲れのようだったので、無事を祈りつつ山頂を後にした。
いかにも六甲山系っぽい笹の間をざわざわ歩いてゆっくり下っていく。
特に迷うようなところはないが、道標もあるので安心。
人気はまったくない。
荒地山まで登る人は多いが、ほとんどが同じ道を折り返すか風吹岩の方に下りるのだろう、と思いながら樹林帯をさくさくと歩く。
その時。
どこからともなく変な音が聞こえてきた。
無人の山中に響く「瀬戸の花嫁」
それはたて笛の音だった。
お世辞にも上手というわけではない、つたない感じの演奏だ。
演奏者の姿は見当たらない。
最初は親と一緒に登ってきた子供が練習しているのかな、と思ったが、だんだん音がはっきり聞こえてくるにつれて違う、とわかった。
だってその曲は「瀬戸の花嫁」だったのだから。
この曲を知らない、もしくは聞いたことあるかも、くらいの若い世代ならなんとも感じないのかもしれない。
まさに子供が縦笛の練習してるんかな?と思うくらいで。
しかし、私は違う。
この曲をほぼそらで歌える世代だ。
更に言うとこの曲をリアルで知っているぎりぎりの世代だと思う。
つまり、この曲を縦笛で吹いているのは私よりおそらく年上。そんな中高年世代がこんな山中で延々と瀬戸の花嫁を吹いている。
河原や港とかならそんなに気にならなかったと思うけど、なぜにわざわざこんなところまで登ってきて縦笛を吹いているのか。
ちょっと気味が悪い。
何だか怖い。
登山道に散る椿の花の赤色すら禍々しく映る。
横溝正史の映画の世界である。
真っ赤な椿の絨毯の上、極彩色の着物をひっかけた三人娘が縦笛を吹いていたらどうしよう。
せめて違う曲も吹いて欲しい。
「喝采」とか「せんせい」とか。
「どうにも止まらない」とか。あ、これは縦笛では吹きにくいかな。
同じルミ子で「私の城下町」はどうだ。
しかし、姿なき演奏者は繰り返し繰り返し「瀬戸の花嫁」を吹き続けている。
エンドレスで流れる「瀬戸の花嫁」を聞きながら私はうつむき加減に椿の花を踏みしめながら先を急ぐ。
・・・
・・・
どれだけ歩いたことだろう。
ようやくそのメロディから解放され、一安心しながら歩いているとひときわ大きな岩。
地図に【キノコ岩】というのがあるので、それだろうか。
やや無理があるが、まあキノコに見えないこともない。
キノコ岩(かもしれない)を通り過ぎた後、ゆるやかだった道は急な下りになってきた。気を引き締めて下りて行く。
下りが終わると、小さな川のほとりにでた。
ここでちょっと方向を見失うが、よく見ると川を超えた木立の向こうに階段らしきものが見える。
川を渡って、
階段を登る。
いきなり舗装路に出た。
道標があるのでここが登山口のようだ。
【ゴルフ橋】という身も蓋もない名前の橋のそば。
ゴルフ場に入り込まないように【芦屋ゲート】方面へ。
注意書きもばっちり立てられている。
すぐに車道脇に歩行者用のスロープがあるのでそちらへ進んでみた。
スロープを登ると芦屋ゲートの脇にでた。
こちらで正解。
今回もトイレは使用せず。
駐車場を横切れば真正面に各線芦屋駅方面行のバス停だ。
春の陽気を浴びのんびりバスを待ちながら、ふと口ずさむのはもちろん「瀬戸の花嫁」なのだった。